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ヘリコバクター ピロリ菌について

[2024.06.03]

ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、H. pylori)胃炎は、ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)によって引き起こされる胃の炎症です。ピロリ菌は胃の粘膜に生息します。従来胃内には強力な酸(胃酸)があるため、細菌が存在しないといわれていました。しかしながらピロリ菌はその菌体をアルカリ性であるアンモニアでコーティングすることで、酸性度の高い胃の内部でも生き残る事ができます。ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、さらには胃がんのリスクを高めるとされています。ここでは、ピロリ胃炎の疫学、症状、診断方法、治療法、 Q&Aについて説明します。

ピロリ菌の疫学

ピロリ菌は、東アジア及び発展途上国によくみられる細菌です。欧米諸国(アメリカ・ヨーロッパ)ではあまり検出されていません。理由としては東アジアでは以前井戸水を使っており、そこに吐物や糞便が混入して経口感染したのではという仮説があります。その証拠として、日本では水道状況が改善される前の、年齢が60歳以上の方のピロリ菌感染率は70~80%であるのに対し、若年者の感染率は10%程度と、急減しております。

ピロリ菌は主に幼少期に感染します。感染経路は井戸水の経口摂取や口から口への接触(例えば、共有された食器の使用や親から噛み食べ)経路で伝播します。大人になってからの感染確率は高くありません。そのため、幼少期に感染してゆっくりと胃にダメージを与える細菌です。

症状

多くの感染者は、特に症状を感じることなく生活していますが、一部の人には以下のような症状が現れることがあります。

  • 腹痛
  • 胃もたれ
  • 食欲不振
  • げっぷ
  • 吐き気や嘔吐 これらの症状は、他の胃腸疾患と似ているため、ヘリコバクター・ピロリ胃炎の診断は症状だけでなく、特定の検査を要します。

診断方法

ピロリ菌胃炎の診断には以下のような検査が用いられます。尚保険診療では、内視鏡検査を行わないとピロリ菌検査はできません。

  • 呼気テスト:呼吸を分析して、H. pylori菌の代謝産物を検出します。
  • 血液検査:H. pyloriに対する抗体を検出します。
  • 便検査:便中のH. pyloriの遺伝物質や抗原を検出します。
  • 胃内視鏡検査:直接胃の内部を観察し、必要に応じて組織サンプルを採取します。

治療法

ヘリコバクター・ピロリ胃炎の治療には、抗生物質を用いた除菌療法が行われます。通常、2種類以上の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤など)を組み合わせて使用し、1週間の治療期間で92.5%除菌可能です。もし除菌できなければ二次除菌までは保険診療で認められております。

治療後

治療後に再度ピロリ菌が感染する可能性は1%以下と、高くありません。また、ピロリ菌を除菌することで胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発率は激減します。胃がんの発生率も10分の一以下になりますが、残念ながらゼロになる事はありません。年間確率で0.4-0.5%胃がんが発生するといわれております。そのため、除菌後も一定の期間は、毎年胃カメラを受けていただく事を進めております。

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