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麻疹(はしか)について

[2024.03.31]

麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症の一つであり、非常に感染力が強い病気です。例えば電車の中で一人でも麻疹感染者がいると、その車両内のすべての人が麻疹ウイルスに暴露され、抗体がない人はほぼ100%発症します。ここでは麻疹の症状・感染経路・治療方法と予後・予防策・特にワクチン接種について説明します。

麻疹の症状と経過

麻疹の初期症状は、高熱、咳、鼻水、目の充血といった風邪に似た症状から始まります。この時期をカタル期と言います。カタル期の2日前、つまり症状が出る2日前より人に感染させる能力を持ちます。カタル期が落ち着くころ、感染後10日から12日でコプリック班という口内炎様の所見が出現しその後発疹が現れ、後に全身に広がります。発疹が出る前後には、体温が39度以上に上がることが多く見られます。解熱後は感染力を失い治癒期に入ります。

感染経路

麻疹ウイルスは、感染した人の咳やくしゃみによって空気中に広がります。また、ウイルスに汚染された物を触った手で目や口、鼻を触ることでも感染します。麻疹は空気感染するため、感染者がいる部屋にいただけで感染するリスクがあります。

治療方法と予後

麻疹に特効薬はありません。感染者に暴露された時、γグロブリンという血液製剤を投与すると発症が防止されることがあります。また感染者に接触後72時間以内に麻疹ワクチンを接種すると感染が防止されることがあります(100%ではありません)。

発症後の治療は、特効薬がないことから症状を和らげ、合併症の発生を防ぐための対症療法が中心です。高熱が出る場合は解熱剤を用い、水分を十分に摂取し、十分な休息と栄養状態を良好に保つことが重要です。

感染後まれにウイルス性肺炎を発症することがあり、重症化した場合や合併症が発生した場合には、入院しての治療する事もありますが、残念なことに死亡例も報告されております。また感染者の数万人に一人が麻疹ウイルスに感染後数年~10年近く経過して亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という脳炎を来すことがあります。SSPEを発症した場合の予後は不良で、数か月~数年をかけて寝たきりになり死亡します。

予防策とワクチンについて

麻疹の最も効果的な予防策はワクチン接種です。麻疹・風疹(MR)混合ワクチンが用いられ、生後1歳頃に第1回、小学校就学前の1年間に第2回の接種が推奨されています。これにより感染のリスクを大幅に減少させることができます。以前アメリカ等で麻疹パーティなるものが普及した事がありました。感染者と同一の部屋でパーティを行い、自然に感染させて免疫を獲得させる方法です。確かに抗体獲得には有効ですが、上述したように重症化・死亡する可能性もあり、医学的にはお勧めできません。

ワクチン接種歴が不明な方、すでに抗体を持っている方がMRワクチンを接種しても問題はありません。ですが後述するように2024年現在ワクチンの生産がおいついていないため、当院では優先順位の高い人から接種しております。

日本における麻疹ワクチンの接種率は、過去数十年にわたり変動してきました。1978年に麻疹ワクチンの定期接種が開始されて以来、接種率は徐々に上昇していきました。しかし、1994年に予防接種後無菌性髄膜炎を発症した例が報告されたため、1990年代後半から一時的に接種率が低下しました。1994年から2006年までに小学生就学前だった方は、麻疹ワクチンを1回しか接種していない可能性があるため抗体が少なく、麻疹を発症する可能性があります。

つまりワクチンを接種するべき方は2024年現在


① 30歳から50歳程度までの年代の方は、抗体価が少ない可能性があります。抗体検査を行い、必要であれば麻疹ワクチン(MRワクチン)接種が推奨されます。

MRワクチンは生ワクチン(ウイルスを継代培養して無毒化したもの)の為、妊娠している女性に接種することはできません(ですが妊娠中に接種してしまった方がいて、その方の調査では出産事故が発生していないことから、接種後妊娠が判明しても中絶する必要はありません)。ですが安全性を考え、妊娠を考えている女性は妊娠の2か月前にワクチン接種を受けることをお勧めします。

② 30歳までの方は、多くの方が2回麻疹ワクチンを接種しているため、抗体を持っている方がほとんどです。

③ 50歳以上の方は、予防接種を受けているか不明な方が大半ですが、子供の時に自然感染している方がほとんどであり、あまり心配する必要性はありません。

尚2024年4月現在、麻疹感染者が海外より渡航したことから日本国内で発症者報告がされました。そのためワクチン接種需要者が急増し、現在当院でも納入できない状態です。そのため当院では抗体検査を行い、抗体がある方にはワクチン接種を控えていただき、感染者と接触した方や、抗体価の低い妊娠希望の方(妊娠2か月前)に在庫の数少ないワクチンを接種することにしております。尚抗体検査は自由診療となり、当院では7000円の料金がかかります。

 

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